帯状疱疹後遺症、特に帯状疱疹後神経痛(PHN)は、一度発症すると長期にわたる痛みに悩まされる可能性があり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。この厄介な後遺症を未然に防ぐための最も効果的な手段は、予防接種と、もし発症してしまった場合の早期治療です。これらの対策を講じることの重要性について詳しく見ていきましょう。まず、後遺症予防の最も強力な手段は「帯状疱疹ワクチン」の接種です。帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスが原因で、免疫力が低下した際に再活性化して発症します。ワクチンを接種することで、このウイルスの再活性化を抑え、帯状疱疹の発症自体を予防したり、発症したとしても症状を軽くしたりする効果が期待できます。特に、帯状疱疹後神経痛への移行リスクを大幅に低減できることが報告されており、PHNの予防という観点からは非常に有効な手段です。日本で現在承認されている帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があります。生ワクチンは比較的安価ですが、免疫抑制状態の方には接種できません。一方、不活化ワクチンは高価ですが、免疫抑制状態の方でも接種が可能であり、より高い予防効果と持続性が期待されています。50歳以上の成人には、不活化ワクチンの接種が強く推奨されており、これにより後遺症のリスクを大幅に下げることが可能です。次に、もし帯状疱疹が発症してしまった場合の「早期治療」も、後遺症予防には極めて重要です。帯状疱疹は発疹が現れる前にピリピリとした痛みを感じる前駆症状が現れることがあります。この時点で、あるいは発疹が現れた直後の「できるだけ早い段階」(目安として発疹出現から72時間以内)に医療機関を受診し、抗ウイルス薬の投与を開始することが重要です。抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑えることで、神経への損傷を最小限に留める効果があります。これにより、急性期の痛みを軽減するだけでなく、帯状疱疹後神経痛への移行リスクを低減し、その重症度を和らげる効果も期待できます。